二部練習 ランニング 方法の基本は、二部練習を「二回とも頑張る日」ではなく、主練習に短い低強度走を足す日として設計することです。朝夕の役割を先に固定し、走行距離は直近の安定した週から考えます。睡眠、補給、痛み、翌日の重要練習に問題があれば、二回目は短縮または中止してください。
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二部練習を始める前の導入条件
二部練習を始める条件は、一日一回のランニングを継続でき、翌日までに回復できていることです。距離を増やしたいという理由だけでは足りません。何を改善したいのか、二回目を置いても守るべき主練習は何か、睡眠と食事の時間を確保できるかを先に確認します。
高頻度の練習が使われる背景はあります。Sports Medicine誌に掲載された世界トップ長距離選手のレビューでは、マラソン選手の中期準備期は160–220 km、トラック選手は130–190 kmで、両群とも11–14セッション/週、総走行量の≥ 80%が低強度でした。研究チームは公開された59人の世界トップ選手と16人のコーチのログや哲学を検討しています。原文の「Both groups perform 11–14 sessions per week」は、「両群は週11–14セッションを行う」という意味です(原文英語)。
ただし、この記述は市民ランナーへ11–14セッションを勧める処方ではありません。世界トップの持久力トレーニングは、長い競技歴、回復環境、専門家の支援を含む結果実証型の実践です。同じレビューが示す重要点は、頻度の多さよりも「≥ 80%が低強度」であることです。二部練習を導入するときは、高強度の回数を倍にするのではなく、低強度の置き場所を増やすと読み取るのが妥当です。
心肺体力、ランニングエコノミー、最大酸素摂取量は、一日の刺激を増やすだけでは改善しません。追加走は有酸素運動の頻度を増やしますが、運動強度が上がって翌日の主練習を崩せば、週全体の質は下がります。年間計画への置き方は上級者向けトレーニング法も参照してください。
導入条件は、一日一回で強い疲労を持ち越さない、二回目の目的を説明できる、睡眠と補給を削らない、翌日の重要練習を守れる、局所痛がない、の五つです。一つでも外れる場合は通常週を安定させます。頻度は結果であり、出発点ではありません。
朝夕の負荷をどう分けるか
朝夕のトレーニング負荷は、主練習を一方だけに置き、もう一方を低強度へ落とすのが基本です。朝と夕方を対等な二つの練習と考えると、両方のペースを上げやすくなります。「主練習+追加ジョグ」という非対称な組み合わせにすると、二回目の目的が明確になります。
トレーニング強度分布は、低・中・高強度へ練習量をどう配分したかという考え方です。二部練習の日だけを切り取らず、週全体で見ます。世界トップの資料で頻度と同時に≥ 80%の低強度量が示されている点は、この見方と整合します。
| 朝の役割 | 夕方の役割 | 判定 | 設計上の注意 |
|---|---|---|---|
| 短い低強度走 | 主練習 | 基本形 | 朝は疲労を残さず、夕方の質を守ります |
| 主練習 | 短い低強度走 | 条件付き | 夕方は回復目的に限定し、ペースを上げません |
| 短い低強度走 | 短い低強度走 | 距離追加向け | 連続走の代替ではなく、頻度を増やす日です |
| 高強度走 | 高強度走 | 原則避ける | 測定・監督下の専門的計画を除き、市民ランナー向けではありません |
| 痛みがある走り | 追加走 | 中止 | 二回目を外し、回復を優先します |
主練習がインターバルトレーニングや閾値走なら、追加走は低強度にします。トークテストで会話できるジョギングが目安です。閾値走は乳酸性作業閾値付近を狙うため、同日にもう一度質を重ねません。インターバルの回復区間と、朝夕に分ける回復時間も別物です。
ペース走を朝夕へ置くと中強度が積み重なり、楽な日と厳しい日の差が消えます。ポラライズドトレーニングの強度配分を参考に、二回目を低強度へ落としてください。短時間でもフォーム、呼吸、脚の張りが悪化すれば負荷は過大です。
走行距離を週単位で組み立てる
週間走行距離は、二部練習の追加分を考える基準です。月間の目標値から逆算して毎日距離を埋めるのではなく、直近で安定して完了できた週を基準にします。追加走を置いた週も、翌日の主練習、休養、痛みの有無までを一つの結果として記録してください。
最初に守るのは、重要練習と休養日です。残った余地へ二回目を置きます。この順序を逆にして「先に追加距離を確保し、疲れたら休養を削る」と、計画全体が距離目標に従属します。トレーニングのピリオダイゼーションでは、準備期、試合期、移行期などで目的が変わるため、同じ二部練習を一年中続ける必要もありません。
走行距離は、安定した通常週を選ぶ、重要練習と休養日を固定する、追加ジョグの候補日を置く、翌日の主練習を評価する、異常があれば次週に戻す、の順で組みます。日数と一回あたりの距離を同時に増やさない漸進性過負荷が基本です。
オーバーユース障害は、反復負荷が回復を上回る使いすぎの障害です。短く分けても地面反力を受ける接地は増え、疲労下では神経筋疲労がフォームへ表れます。一回の負担感ではなく週全体を見てください。
カピバランの実践解説は、20kmを10km×2回へ分ける例と「10kmという距離への耐性しかつきません」という注意を併記しています。総距離が同じでも連続時間への適応は同じではありません。
手順
二部練習の手順は、通常週の記録から始め、候補日、主練習、回復条件、中止基準の順に決めます。走り出してから二回目を判断するのではなく、実施・短縮・中止の条件を先に書くことがポイントです。
ステップ1: 直近の安定週を一つ選ぶ
最初に、重要練習と休養を計画どおり完了できた週を基準週として選びます。成功の目安は、週末の距離だけでなく、翌週の最初の主練習まで崩れていないことです。
速かった週や最長距離の週ではなく、再現できた週を選びます。記録には走行距離、練習種別、睡眠、痛み、翌日の脚の状態を残してください。基準週が定まらない場合は、二部練習を足す前に一日一回の計画を安定させます。
よくある失敗と修正:最も距離が多かった週を基準にすると、開始時点から余裕がありません。主練習と休養を守れた週へ戻します。
ステップ2: 追加走を置く候補日を決める
候補日は、二回目のあとに重要練習が連続しない日を選びます。仕事、移動、食事、入浴、就寝までを書き出し、走る時間だけでなく回復時間が残るかを確認します。
夕方に主練習を行うなら、朝は短い低強度走の候補です。朝に主練習を行うなら、夕方は疲労抜きの動きに限定します。翌朝がロング走や高強度走なら、前夜の追加走は外す方が計画全体を守れます。
よくある失敗と修正:空いている曜日だけで選ぶと、翌日の重要練習と衝突します。候補日単体ではなく、前後の練習を一緒に見ます。
ステップ3: 主練習と追加ジョグの役割を固定する
二回のうち、どちらが主練習かを一行で書きます。「朝は追加ジョグ、夕方は主練習」のように役割を固定し、追加ジョグではペースを競いません。
追加走の強度は、自覚的運動強度、会話、心拍ゾーンを組み合わせて確認します。RPEはBorgスケールのように主観を記録する方法です。心拍数は最大心拍数から作るゾーンだけで決めず、暑さや時間経過で起こる心拍ドリフトも考えます。
よくある失敗と修正:朝の調子が良いから速く走ると、夕方の主練習を削ります。追加ジョグの成功条件を「速さ」ではなく「主練習を守れた」に置き換えます。
ステップ4: 間隔ではなく回復工程を確保する
一回目が終わったら、着替え、水分、糖質、通常食、仕事や移動、休息を含む回復工程を確保します。時刻の間隔だけが空いていても、食べられず座れず移動し続けているなら、二回目の準備は整っていません。
持久系高強度と筋力練習を同日に組み合わせる資料では、「A period of recovery of at least 3 h should be given」、つまり「少なくとも3 hの回復時間を設けるべき」と提案されています(原文英語)。これはすべての二部走に共通する万能値ではありませんが、短い間隔で質を重ねないための下限思考として使えます。
よくある失敗と修正:時計だけを見て「時間が空いた」と判断します。補給、休息、脚の状態まで回復工程として記録します。
ステップ5: 二回目を実施・短縮・中止する
二回目の直前に、睡眠、局所痛、全身疲労、呼吸、翌日の重要練習を確認します。予定どおり走ることより、短縮や中止を正しく選べることが二部練習の技術です。
ランニングフォームが最初から崩れる、片側だけ痛む、予定の低強度なのに会話できない、翌日の主練習が重要という場合は中止します。全身が少し重いだけで痛みがなく、短い低強度なら整う場合もありますが、距離を取り戻そうとペースを上げないでください。
よくある失敗と修正:走り始めた以上は予定距離を終える、と考えます。二回目には「実施」「短縮」「中止」の三つを同じ成功候補として用意します。
flowchart TD
A["二回目の直前確認"] --> B{"局所痛がある"}
B -->|はい| C["中止して回復へ"]
B -->|いいえ| D{"睡眠不足または強い全身疲労"}
D -->|はい| E["中止または散歩へ変更"]
D -->|いいえ| F{"低強度で会話できる"}
F -->|いいえ| G["短縮して終了"]
F -->|はい| H{"翌日に重要練習がある"}
H -->|はい| I["短い追加ジョグのみ"]
H -->|いいえ| J["予定した低強度走を実施"]二回目は「予定どおり走る」だけでなく、短縮と中止を最初から同じ選択肢にします。
二部練習の具体例
二部練習の具体例は、総距離ではなく「どの刺激を残すか」で選びます。同じ距離を二つに分けても、連続走、低強度の頻度追加、筋力練習との併用では目的が異なります。
| 目的 | 一回目 | 二回目 | 残すべき刺激 | 避けたい変更 |
|---|---|---|---|---|
| 夕方の質を守る | 短い低強度走 | インターバルまたは閾値走 | 夕方の設定とフォーム | 朝走を中強度へ上げる |
| 距離の頻度を増やす | 低強度走 | 低強度走 | 週全体の低強度量 | 連続走の代替と考える |
| 暑い時間を避ける | 涼しい時間の低強度走 | 涼しい時間の低強度走 | 安全な環境と補給 | 暑熱への適応を済ませたと誤解する |
| 持久系と筋力系を併用 | 持久系の主練習 | 筋力練習 | 種目ごとの質 | 補給せず短時間で重ねる |
ロング走は、マラソン後半を想定して連続時間を作る練習です。マラソンのペース配分や30kmの壁への対応も練ります。20kmを10km×2回へ分けても同じ刺激にはなりません。詳しくはロング走の効果と距離・ペースを参照してください。
一度に走れる時間が限られる日は分割が現実的です。皇居ランスタイルは、メリットを「『朝と夜の時間』を利用して『走る距離や時間』を伸ばすことができる」と表現しています。ただし、空いた時間をすべて高強度へ変えません。
夏は体温調節に加え、発汗率と脱水の兆候を見ます。走る練習と筋力トレーニングを行うコンカレントトレーニングでは、順序、補給、回復を先に決めます。二部練習と連日のロング走を使うセット練習も別物で、前者は一日、後者は日をまたいで刺激を作ります。記事ではセット練習の効果を別に解説しています。
回復・補給・睡眠を二回目の条件にする
運動後の回復は、二部練習の間に「空いた時間」ではなく、二回目を可能にする工程です。水分とエネルギーを戻し、通常食を取り、睡眠と休息を確保できなければ、朝夕の間隔が長くても回復したとは言えません。
日本スポーツ協会の公認スポーツ栄養士による解説は、「運動で失われた水分やエネルギー(糖質・タンパク質(楽天 / Amazon / Yahoo!))をなるべく時間を空けずに補給することがポイント」としています(JSPO Plus)。同資料は、回復を次の三段階で示します。
| 運動後の時点 | 補給内容 | 二部練習での使い方 |
|---|---|---|
| 30~45分以内 | 水分と糖質 | 着替えと同時に飲めるものを準備します |
| 1~1.5時間以内 | タンパク質と微量栄養素、水分 | 通勤・移動中でも食べられる補食を用意します |
| 2時間程度 | 主食、主菜、副菜、果物、乳製品 | 次の練習前に通常食へ戻します |
水分補給では、スポーツドリンク(楽天 / Amazon / Yahoo!)を一律に選ばず、汗、食事までの時間、運動時の胃腸トラブルを見ます。大量発汗時は電解質も考え、飲めない状態や脱水兆候があれば二回目を外します。
炭水化物は、筋肉と肝臓のグリコーゲンを戻します。通常食の消化が難しければ補食を使いますが、偶然の補給不足を適応刺激と呼び替えません。エネルギー収支が不足した状態を重ねると、スポーツにおける相対的エネルギー不足につながる懸念があります。筋力練習を併用する日は筋タンパク質合成を支えるタンパク質も食事へ含めます。
JSPO資料は通常食を開始2-3時間前まで、空腹なら1時間前までの補食を例示します。朝練後に昼食まで何も食べない計画では、時間が空いても回復工程が抜けています。
睡眠は、走る時間を増やすために削ってはいけない条件です。JSPO Plusの睡眠解説が紹介する実験では、4時間睡眠群は6日目、6時間睡眠群は10日目に、完全徹夜群の1日目に相当する注意力低下が見られました。別に紹介された学生アスリート160人の研究では、傷害割合は9時間睡眠群が約20%、6時間睡眠群が約70%でした。
この数字を「全員が9時間眠れば傷害率が約20%になる」と一般化してはいけません。対象、年齢、競技、生活条件が異なります。読み取るべきなのは、睡眠不足の影響は一晩の眠気だけでなく、日ごとに蓄積し、注意力や傷害リスクと関係するということです。朝の追加走のために起床だけを早め、就寝を変えない設計は長続きしません。
回復の記録は、完璧な栄養計算ではなく、二回目の判断材料として使います。最初の練習後に飲めたか、食べられたか、座って休めたか、眠れたかを短く記録してください。距離を細かく測るのに回復工程を記録しないのは、計画の半分だけを管理している状態です。
よくある失敗
二部練習の失敗は、走れなかったことより、二回目を追加した結果として週全体の目的がぼやけることです。次の失敗は、距離を増やせている間ほど見逃されやすくなります。
二回とも速く走る
二回とも速く走ると、低強度の日が中強度へ変わります。朝の調子が良くても、追加ジョグの役割を変えません。速さを上げたいなら、夕方の主練習の質として評価します。
月間距離だけを追う
月末の数字を埋めるための追加走は、休養と重要練習を後回しにします。週間で、主練習、休養、痛み、睡眠まで確認します。距離が増えても主練習が崩れたなら成功ではありません。
ロング走をすべて分割する
ロング走として30km走・3時間走が難しい場合、15km・90分へ分ける案は実行しやすくなります。しかし、分割後の総量だけを見て連続走と同じと考えないでください。連続時間への適応が目的の日は、距離、ペース、環境を調整しながら一回で行う必要があります。
痛みを疲労と決めつける
筋肉痛や遅発性筋肉痛の広い張りと、片側一点の痛みは分けます。走るほど局所痛が増える場合、二回目をアクティブリカバリーと呼んで続けません。ウォーキングや休養へ変更します。開始前のウォームアップ、動的ストレッチ、終了時のクールダウンも、痛みを隠して続ける手段ではありません。
睡眠を削って朝走る
朝の時間を作るために睡眠を削ると、追加した一回と引き換えに回復を失います。4時間睡眠群の6日目、6時間睡眠群の10日目という注意力低下の紹介は、「慣れたつもり」だけでは判断できないことを示します。起床を早めるなら、就寝も同じ計画で動かします。
距離を増やす変更を重ねる
候補日、追加走の長さ、主練習の強度を同時に変えると、疲労の原因を特定できません。変更は一つずつ行い、翌日の状態を見てから次へ進みます。二部練習は追加する技術であると同時に、変更を戻す技術です。
二部練習を続けるかの判断基準
二部練習を続ける基準は、追加した距離ではなく、主練習、休養、睡眠を守れたかです。二回目を終えた直後ではなく、翌日の状態まで見て「継続」「短縮」「中止」を決めます。
継続は、追加走が低強度に収まり、局所痛がなく、翌日の重要練習を計画どおり行えた場合です。短縮は、開始時の全身疲労が予定より強いものの、痛みがなく、低強度で動ける場合です。中止は、局所痛、睡眠不足、回復食を取れない状況、翌日の重要練習との衝突がある場合です。
レース前のテーパリングでは、頻度を維持する場合でも、追加走の量をそのまま残すとは限りません。二部練習が習慣化しているほど、「いつも行うから」という理由で残しやすくなります。競技へ向けたマラソントレーニングでは、目的に合わせて削る判断も計画の一部です。
二部練習が向かないのは、一日一回でも疲労が残る人、睡眠を確保できない人、痛みがある人、連続走の耐性を作ることが主目的の人です。反対に、一日一回が安定し、重要練習を守りながら低強度の頻度を追加できる人には選択肢になります。
最後に、練習日誌へ次の四点だけ書いてください。
- 一回目と二回目の役割
- 二回目を短縮・中止する条件
- 最初の練習後に行う補給と休息
- 翌日に守る重要練習
この四点を事前に書けない日は、二回目を置かない方が明快です。二部練習の価値は、走る回数そのものではなく、週全体の目的を壊さずに追加できることにあります。
出典
- ランニングにおける二部練習のメリットとデメリット — 2017-08-28 — 朝夕の時間活用と生活上の注意を確認
- マラソントレーニングとしての二部練習のメリット・デメリット、注意点について — 2025-09-16 — 分割走と連続走の負荷の違いを確認
- スポーツをする人におすすめの春レシピ!試合後や練習後の疲れた身体をやさしくリカバリー — 2022-03-10 — 運動後の段階的な水分・糖質・食事補給を確認
- アスリートにとって睡眠は大事!プレーヤーの心と体を守る睡眠のキホン — 2025-07-23 — 睡眠制限、注意力、傷害割合の紹介を確認
- The Training Characteristics of World-Class Distance Runners — 2022-04-01 — 週間距離、週11–14セッション、低強度割合を確認 —
[en] - Using Nutrition And Molecular Biology To Maximize Concurrent Training — 2026-01-01 — 同日に持久系と筋力系を行う場合の間隔と補給を確認 —
[en]