ランニング 水分補給 方法の基本は、水分補給の固定量を暗記することではなく、運動前後の体重と途中の飲水量から発汗率を測り、当日は喉の渇き・気温・走行時間で調整することです。最初は1時間当たり400〜800mlを仮の範囲にし、15〜20分ごとに体調を確認します。ただし、そのたびに必ず飲み切る必要はありません。
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水分補給だけを切り離して考えると、飲料の量ばかりが気になります。実際には、ランニングの強度、食事、糖質補給、携行具まで一続きです。スポーツ栄養の全体像はランナーの栄養と補給の設計、長時間走の糖質はエネルギー補給戦略と分けて確認すると整理しやすくなります。
ランニング中の水分補給を決める3つの基準
ランニングの水分補給量を決める第一の基準は、個人の発汗率です。第二は喉の渇き、第三は気温・湿度・運動時間です。この3つを合わせれば、他人のボトル量や一律の時刻表に引っ張られにくくなります。
基準1:発汗率で持参量の範囲を作る
発汗率は、1時間当たりに失った汗の量です。同じ人でも涼しいジョグと真夏のロング走では変わるため、1回の測定値を一年中使い回しません。
3Wellnessは、体重60㎏の人で水分損失が2%なら1200cc、3%なら1800ccと例示しています。ここで重要なのは、2%や3%を狙うことではなく、体重変化を記録して自分の傾向を把握することです。
基準2:喉の渇きを当日の調整弁にする
時計は体調を確認する合図にはなりますが、飲水命令ではありません。15〜20分ごとに口の乾き、暑さ、胃の揺れを確認し、渇いていれば少量を取ります。渇きがなく胃が重いなら、次の確認まで待つ余地があります。
これは固定時刻と感覚の二者択一ではありません。事前測定で「持つ量」を決め、喉の渇きで「実際に飲む量」を調整します。RUN JOURNEYが示す1時間当たり400〜800mlも、全員のノルマではなく、初回計画の幅として扱う方が安全です。
基準3:脱水と飲み過ぎを両側から見る
脱水だけを恐れると、走り終えるまでにボトルを空にする行動へ傾きます。一方、飲まなさすぎれば体温調節に使う発汗を支えられません。終了後の体重減少と体重増加を、どちらも確認してください。
アメリカスポーツ医学会(ACSM)の基準を紹介する大塚製薬の記事には、「アメリカスポーツ医学会の基準では、体重減少率が1%以上から脱水としています。」とあります。数字は警告線として使い、めまい、吐き気、意識の変化がある場合は計算より走行中止を優先します。
準備するもの
水分補給を測定可能な作業にするには、飲料だけでなく記録道具が必要です。汗を多くかく長時間走では電解質を含むスポーツドリンク(楽天 / Amazon / Yahoo!)も候補になりますが、短い涼しいジョグで毎回必要とは限りません。成分の比較はランニング向けスポーツドリンクの選び方で確認できます。
- 体重計:走る前後を同じ条件で測ります。排尿、衣類、濡れた髪やウェアの差を小さくします。
- 目盛り付きボトルまたは重量を量れる飲料:途中で飲んだ量を記録します。
- 記録手段:気温、走行時間、前後体重、飲水量、渇き、胃の感覚を残します。
- 水または電解質飲料:短時間は水を基本にし、長時間・大量発汗では飲料表示を確認します。
- 糖質補給の記録:飲料に炭水化物が入る場合、グルコースやエネルギージェルによる補給と重複しないようにします。
- 成分表示の確認:フルクトースやカフェインを含む飲料は、量だけでなく練習中の胃腸反応も記録します。
大塚製薬の記事では、汗を多くかいた場面の飲料として食塩0.1~0.2%、糖質4~8%程度を示しています。ただし、糖質濃度が高いほど常に優れるわけではありません。胃にたまりやすい人は、製品表示どおりに薄め、レース前に練習で反応を確かめます。
手順
水分補給の手順は、測る、仮決めする、走りながら調整する、次回へ修正する、の4段階です。日本スポーツ振興センターも、運動前後の体重変化や環境条件を用いて個人の量を調整する視点を示しています。
ステップ1: 60分走で発汗率を測る
発汗率は、走行前体重から走行後体重を引き、途中の飲水量を足して、走行時間で割ります。RUN JOURNEYは「発汗量=体重減少量 + 飲水量」と整理しています。排尿した場合は尿量も考慮します。
たとえば走行前60.0kg、走行後59.5kg、途中で300ml飲み、1時間走った場合、推定損失は約800mlです。体重差0.5kgを約500mlとして扱い、飲水300mlを加えます。この例は計算法を示すもので、次回に800mlを必ず飲み切る指示ではありません。
測定日は普段の運動強度に近いペースを選びます。自覚的運動強度も記録し、真夏、冬、速いペースで別々に測ると、持参量を一点ではなく範囲で持てます。
ステップ2: 走行時間と補充点から持参量を仮決めする
持参量は、発汗率だけでなく、次に補充できるまでの時間で決めます。自動販売機や水道がある30分周回なら全量を背負う必要はありません。無補給の河川敷を90分走るなら、途中離脱できる場所も含めて計画します。
初回は1時間当たり400〜800mlを参考範囲にし、測定した発汗率、気温、渇きの出方で上下させます。開始30分から1時間前に約200~500mlを数回へ分ける目安もありますが、直前の一気飲みは避けます。
ステップ3: 15〜20分ごとに渇きと胃腸を確認する
15〜20分ごとの確認では、喉の渇き、口の乾き、暑さ、胃の揺れ、ふらつきを順に見ます。Next One Labは約100~200mlを目安に挙げていますが、これは確認時の候補量です。渇きが弱いのに毎回200mlを飲む運用にはしません。
水分補給で腹部が張る、脇腹が痛む、げっぷが増える場合は、運動時の胃腸トラブルを疑います。長時間・高強度で症状が続く場合は運動誘発性胃腸症候群も念頭に置き、一口量を減らして次の確認まで間隔を空けます。症状が強まるならペースを落とすか中止します。
ステップ4: 終了後の体重から次回量を調整する
終了後は汗を拭き、同じ衣類条件で体重を量ります。RUN JOURNEYの脱水率は「体重減少量 ÷ 走行前の体重 × 100」です。体重が大きく減ったうえに強い渇きが残るなら次回の持参量を増やし、終了後に体重が増えたなら減らします。
Rehab2Performは「Every pound lost = ~16 ounces of fluid you’ll need to replace.」と説明しています。日本語にすると「1lb減るごとに約16ozを補う」という目安です(原文英語)。運動後の回復を急いでも一気には飲まず、食事の塩分や尿の状態と合わせて段階的に戻します。
携帯方法の選び方
ハイドレーションベルトとソフトフラスク(楽天 / Amazon / Yahoo!)は、給水を止まらず行いたいロード走で組み合わせやすい道具です。長い無補給区間ではランニングベスト、大会では給水所の間隔を基準に容量を決めます。
道具名から選ぶより、次の補充点まで何分かを先に決めてください。容量が大きいほど安心とは限らず、重さと揺れも増えます。
| 方法 | 向く場面 | 容量の考え方 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 周回コースに置く | 30〜60分、同じ場所へ戻れる | 1周で必要な一口分を残す | 直射日光、衛生、取り違えを避ける |
| ボトルホルダー付き手持ち | 補充点が近い短〜中時間走 | 片手で扱える小容量 | 握り疲れ、左右差が出たら持ち替える |
| ウエストバッグ・ベルト | 60〜90分のロード | 小容量を腰へ分散 | 腰回りの締め過ぎと上下動を確認する |
| ベスト+ハイドレーションリザーバー | 長い河川敷、トレイル、無補給区間 | 区間時間と発汗率から逆算 | 残量が見えにくいため目盛りを確認する |
| 折りたたみ式携帯コップ | 大会・給水設備があるコース | 水は携帯せず容器だけ持つ | 給水用の紙コップがない大会の規定を確認する |
リザーバーのバイトバルブは走りながら少量を取りやすい一方、チューブ内の温度や残量を把握しにくい面があります。荷物が多い通勤ランならバックパックも使えますが、水を背中の片側へ寄せないようにします。
ランニング中の水分補給で起きやすい失敗
ランニング中の水分補給で最も見落とされやすい失敗は、脱水ではなく「計画量を必ず飲み切る」ことです。長時間運動で腎臓が排出できる量を超えて飲み続けると、運動関連低ナトリウム血症につながる可能性があります。
2015年の国際専門家パネルを紹介したEurekAlert!は、この状態にマラソンなどの競技者の死亡が少なくとも14人関連したと報じています。同記事の「Simply put, drink only when you’re thirsty.」は、「端的に言えば、喉が渇いたときだけ飲む」という意味です(原文英語)。
- 失敗:時計が鳴るたび同量を飲む。対策は、時計を確認の合図にし、渇きと胃の状態で一口量を変えることです。
- 失敗:水だけを大量に飲む。対策は、大量発汗や長時間走では電解質も検討し、終了後の体重増加を見逃さないことです。
- 失敗:直前にまとめ飲みする。対策は、開始前から数回に分け、胃の揺れがない状態でスタートすることです。
- 失敗:塩分を取れば飲み過ぎを相殺できると思う。アルギニンバソプレシンなど水分保持に関わる反応もあるため、塩分だけで過剰飲水を帳消しにはできません。
- 失敗:意識変化や嘔吐があるのに自力補給を続ける。対策は走行を止め、周囲へ救護を求めることです。
経口補水液は日常のランニング用スポーツドリンクと同じではありません。使い分けは経口補水液とスポーツドリンクの違いを参照し、症状が強いときは飲料選びより医療対応を優先してください。
距離と環境で決める最終ルール
水分補給の最終判断は、距離そのものより、走行時間、発汗率、暑さ、次の補充点までの時間で決めます。マラソンに向けたマラソントレーニングでも、短い回復走と90分超の走行を同じ計画にはしません。
- 30〜45分・涼しい・補充点あり:事前に渇きがなく、途中離脱できるなら無携帯も選べます。終了後に体重と渇きを確認します。
- 60〜90分・補充点あり:小容量の手持ちかベルトを候補にし、15〜20分ごとに状態を確認します。
- 90分超・補充点なし:発汗率から区間量を計算し、ベストやリザーバーへ分散します。糖質を取る場合は飲料との重複も記録します。
- 高温多湿・強い日差し:量を増やすだけで解決せず、ランニングキャップ(楽天 / Amazon / Yahoo!)と通気性のよいランニングウェア(楽天 / Amazon / Yahoo!)を使い、時間帯変更、距離短縮、休憩を優先します。
- 暑さで負荷が読みにくい:心拍数だけでなくトークテストも使い、会話が難しい強度ならペースを落とします。
- 持病や服薬がある:一般的な量やナトリウムの目安を自己適用せず、医療者の指示を優先します。
水分補給量を増減する循環は次のとおりです。
flowchart TD
A[手順1:前後体重と飲水量を測る] --> B[手順2:発汗率から持参範囲を作る]
B --> C[手順3:15〜20分ごとに渇きと胃を確認]
C --> D{終了後の体重変化}
D -->|大きく減少| E[次回は量か補充回数を増やす]
D -->|増加| F[次回は飲み切り量を減らす]
D -->|範囲内| G[同条件の記録をもう一度取る]
E --> A
F --> A
G --> A発汗率で仮の範囲を作り、当日の感覚と終了後の体重で次回計画を更新します。
持久力トレーニングでは、同じ計画を繰り返すことより、季節とペースが変わった時点で測り直す方が再現性を高めます。覚えるのは固定量ではありません。測定→範囲設定→走行中確認→終了後修正の4手順です。
出典
- 大塚製薬:スポーツ時の熱中症 対策と対処法 — 2019-01-01 — 脱水評価、飲料の食塩・糖質濃度、暑熱対策を確認
- 3Wellness:ランナーのための夏の水分補給 — 2021-08-11 — 発汗率の計算と体重変化の例を確認
- Next One Lab:夏ランニングで熱中症を予防 — 2025-09-19 — 開始前と走行中の補給タイミングを確認
- RUNNING CLINIC:給水「徹底解説」 — 2019-09-02 — 発汗量、糖・ナトリウム、運動前後の補給を確認
- RUN JOURNEY:マラソンレースの水分補給について — 2019-07-28 — 喉の渇き、400〜800ml/時、脱水率の式を確認
- EurekAlert!:Athletes should drink only when thirsty — 2015-06-29 — 運動関連低ナトリウム血症の国際合意を確認 —
[en] - Rehab2Perform:Runner Hydration: Top Strategies — 2025-06-19 — 運動前中後の補給目安を確認 —
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