用語集
運動誘発性胃腸症候群
長時間または高強度の運動に伴い、消化管の血流、上皮バリア、運動性などが変化して胃腸症状につながる生理学的な状態です。
別名: 運動誘発胃腸症候群・運動誘発性消化管症候群・Exercise-Induced Gastrointestinal Syndrome・EIGS・Ex-GIS
定義
運動誘発性胃腸症候群は、長時間または高強度の運動をきっかけに、消化管への血流低下、腸管上皮の損傷や透過性の変化、消化管運動の変化などが重なって起こる状態です。吐き気、嘔吐、膨満感、腹痛、便意、下痢といった症状は、この生理学的な変化が表面化したものと整理できます。単一の病因ではなく、運動強度、時間、暑熱、脱水、補給内容、個人差が相互に作用します。
主な経路
- 循環経路:活動筋と皮膚へ血液が優先され、消化管の血流が減ります。強度や暑さが上がるほど負担が重なりやすくなります。
- 上皮バリア経路:血流低下と体温上昇が重なると、腸管上皮の損傷や透過性変化につながる可能性があります。
- 機械的経路:走動作の反復、姿勢、振動が胃や腸への刺激になります。
- 栄養経路:脂質・食物繊維の多い食事、濃い糖質液、慣れていない補給量などが胃内容排出や吸収との不一致を起こすことがあります。
ウルトラマラソンとの関係
ウルトラマラソンでは運動時間が長く、気温、ペース、脱水、補給の種類と量がレース中に変化します。そのため、最初は問題なく食べられても、後半に吐き気や腹痛が現れることがあります。2015年のオープンアクセス研究では、多日ステージ型の参加者の85%、24時間走の参加者の73%が少なくとも一つの胃腸症状を報告しました。ただし、この割合をすべての大会やランナーへそのまま当てはめることはできません。
症状との区別
「運動時の胃腸トラブル」は症状の総称です。一方、運動誘発性胃腸症候群は、症状に至る循環、上皮バリア、運動性、栄養などの連鎖を説明する概念です。強い腹痛、血便、繰り返す嘔吐、意識の変化がある場合は、一般的なレース中の不快感と決めつけず、競技を中止して救護または医療機関へ相談します。